地域マネジメントプロジェクト
1.環境経済学 (永井 進)
1) 海浜型重化学コンビナートの変遷に関する比較調査
a)川崎 b)四日市 c)尼崎 d)水島 e)鹿島 f)北九州,その
2) 運河の再生と地域社会への影響に関する比較研究
a)小樽 b)柳川(福岡県)
3) 歴史的景観保全に係る主体の国際比較研究
a)日本: 町内会・商工会議所などの地域組織・住民運動組織
b)欧州: グランドワークトラスト・シビックトラスト・ナショナルトラストなどの活動
2.環境経営学 (堀内 行蔵)
(1)テーマ: 地域ステークホルダーと企業のコミュニケーション
(2)内 容: 企業は地域の住民やNGO・NPOと対話を始めている。これは、企業が地球環境問題などをリスクマネジメントからCSR(企業の社会的責任)の問題として捉え、持続可能な経営へと発展していくことを示唆している。日本ばかりでなく、これからは発展途上国での地域社会との共存は企業の持続可能性にとって必須の課題となろう。調査は、先進的な日本企業の実例から出発して、欧米の企業へと拡大する。
(3)メンバー: 地域マネジメントの教員+関連教員(シーゲンターラー助教授他)+研究アルバイト
(4)研究計画: 初年度は文献調査、国内調査(企業やNPOをインタビュー)
次年度以降に海外調査3.NPO (山岡 義典)
4.住民参加型(石神 隆)
5.環境社会学(堀川 三郎)
(1)目的: 研究の中核は,歴史的な町並み景観を保存しようとする運動の論理に着目し,そこから日米の都市問題の比較研究を試みることにある。町並み保存問題は,従来,建築計画学的なハード中心に研究されてたが,本研究では社会学を軸に,歴史学的視点と建築学的な景観調査を活用し,日米の比較研究をようと考えている。それらを社会学的な意識調査データと重ねて分析するところに本研究の意義が若干はあろうかと思われる。すでに日本で20年にわたって調査してきた町並み保存運動のデータをもとに,これを米国との比較研究に発展させようとするものであり,近年の都市再開発政策の基礎的考察として,重要な課題であると思われる。
(2)研究の方法
a) 保存運動の運動過程分析と意識調査
日本国内で行なってきた手法を援用し,米国北東部・ニューイングランド地方の保存運動に対する長期にわたる質的ヒアリング調査を実施することによって,地域住民にとっての歴史的環境の意味付けを浮き彫りにする。この地方は保存運動が盛んな場所であり,すでに1998年にボストンにおいてパイロット・スタディとして運動団体へのヒアリングを開始し,運動団体リストも入手済である。また,2004年4月〜2006年3月までの2年間,法政大学からの在外研究員としてハーヴァード大学に滞在中であり,現地に滞在しての長期ヒアリングが可能な体勢がある。
b) 景観の変動調査――土地利用変化を中心に
建築学的手法を援用したもので,すでに1997年から定点観測として継続実施してきている。上の意識データを,実際の景観変動というハードについてのデータと合わせて分析するところに特徴がある。この点に関しては,ハーヴァード大学所蔵の地図コレクションがひとつのリソースとなるだろうと思われる。
c) 土地所有意識の歴史的解明
歴史学,社会史に学びながら,人々の都市・土地に対する意識がどのように変遷してきたかについて,文献をもとに考察する。この分野ではHolleranやLindgrenなどの先行研究があるが,管見では日米の比較研究は見当たらない。協力者として日米両国の歴史を専門とするTimothy
George教授(U. of Rhode Island・2004年9月からHarvard University Visiting
Professor)の助言を受けながら行なう予定でいる。
上述からもわかるとおり,本研究は都市環境の具体的な変化・変容プロセスを実査し,それを歴史的展望を踏まえて分析しようとするものである。実査(現地でのフィールドワーク)によって明らかにされるのは,まさに変化・変容プロセスの歴史的・社会的要因であり,それを防ごうとする/した人々の実践である。こうした実践は,既存の都市計画にはのらない「地域コミュニティの規範」や「住みこなし」といった「生活知」を指し示している。新しい都市社会や地域マネジメントを構想しようとするとき,これらの知見は不可欠かつ重要なレファレンスになると思われる。
(3)2004年度(1年目)研究計画: 事例選定のためのパイロット・ケース・スタディ
・1)先行研究の収集・読破
・2)事例選定のためのパイロット・ケース・スタディ
・3)ナショナル・トラスト関係の情報収集・分析
先行研究の文献研究は,その後の事例研究の選定に重点を置きながら,系統的に行なう。まずハーヴァード大学,マサチューセッツ工科大学の図書館を利用してリサーチを行なう予定である。また,米英の歴史的環境保存運動を理解する上での鍵になる,ナショナル・トラストについての調査は,首都ワシントンにあるトラスト本部でのヒアリング,年次大会への出席などを予定している。議会図書館では法制度資料の収集を行なう。また,トラスト関係文献では全米一を誇るヴァージニア大学図書館をはじめとして,イェール大学,プリンストン大学の各図書館で探索を行なう。
運動団体のヒアリング調査では,1896年設立のニューイングランド古物保存協会(the Society for the Preservation
of New England Antiquities)と,比較的新しいNPO団体であるHistoric Massachusetts,
Inc.を対象とする。
また,ボストンの「ビッグ・ディッグ」についても,そこに至る合意形成過程を資料とヒアリングをもとに跡付けることも重要な課題を構成するだろう。
したがって,初年度は米国国内調査旅費,文献購入費,複写費,設備備品費などが主要な研究資金の使途となる。
(4) 2005年度(2年目)研究計画: 選定した事例への長期ヒアリングと実測調査
1)選定した事例への長期ヒアリング
2)選定した事例への土地利用実態調査と歴史的変遷の分析
3)地理的解析のためのGISソフトウェアを使っての分析
4)諸運動間のネットワークについての調査
初年度で絞り込まれて選定された事例に対して,1年間をかけて長期ヒアリングを試みる。小樽運河保存運動調査時に蓄積されたノウハウをもとに,自由面接法で行う。運動の活動実態を把握し,構成員の日常をも取材対象とする。様々な行事や公聴会,大会やワークショップに参加して観察を継続する予定である。
さらに,当該分野の専門家との意見交流も行なう。イェール大学,ニューヨーク州立大学,コロンビア大学にいる研究者グループとの意見交換を予定している。
したがって,第2年目は米国国内調査旅費,調査アシスタント代,資料整理アルバイト代,複写費,図面作成費,GISソフト購入費,テープ起こし代などが主要な助成金の使途となる見込みである。
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