「日野台地の地下水と浅川の関係」
山田啓一(法政大学教授)
<報告>
1.「浅川左岸域の河川水と地下水」
日野台地の縁を流れる浅川の上流部から下流部にかけて観測井戸を設け、伏流区間の推定を行った。その結果、上流区間では流量の減少が見られ河川から地下水への流入があり、下流区間では逆に地下水が川に流出していることが分かった。さらに地下水水温の垂直分布の観測から、地下水に流入する流れによる水温の変化が見られ、これが浅川の水温変化の特性と相関があることが分かった。地下水の流れ方向については、CCDカメラによる観測を行い大まかな流れを確認した。これにより、旧河道との地下水の出入りの状況が分かった。
2.「日野湧水群の涵養域調査」
東京都の行った涵養域調査の際に助言した。その報告書の、中央図書館下湧水、黒川湧水群について解説した。ボーリングによる地表等高線、礫層上端面等高線、礫層下端面等高線、地下水位面図などのデータから、図書館下湧水の地下水の流れは、浅川からの可能性があり、一方、黒川湧水群は浅川との関連ない。地下水涵養の全体は台地面の雨水からだが、川との交流は旧河道を介していると考えられる。 <質疑等>
浅川伏流水起源について関心が高く、これを中心に意見交換が行われた。流入部と図書館下湧水について標高差はあるもののそれが湧水につながる流れとは断定できないのでは。図書館下の大腸菌についてはローカルな原因とみられる。硝酸性窒素については農業由来。多摩川も含めた大きな水循環系の中での解析も必要。黒川湧水群については有機塩素のレベルが高く、工場由来と考えられる。ふれあい橋あたりは確かに地下水流入があって生物相が違う。などの意見交換があった。
<今後>
次回は角田清美氏(都立北多摩高校)の研究についてご披露頂く。また、日野プロジェクト湧水チームのモデル地区として東光寺湧水を取り上げ、国土交通省と連携して社会実験を行う予定についての報告もあった。 |