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日野プロジェクト2007研究会(第1回)

日時:2007年11月22日(木)18:30〜20:3013:00〜18:00
場所:法政大学工学部西館601室

テーマ:永瀬・神谷WG
    「日野市における水辺環境再生と建築デザインについての研究」

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「住宅地における水辺環境の空間構成に関する研究
 -日野市における景観分析から見た水路を生かした住宅地について」
法政大学工学部建築学科 永瀬克己研究室
久保田真次・中山康弘

 目的 日野市を流れる多くの用水路の周辺環境はどのように構成されているのか、特に住宅街を対象に景観写真、関係要素分布図、断面図などを作成、それらを分析することで用水路と関係要素の関係を明らかにし、今後の用水路を生かした住宅街のまちづくりの手がかりを見つけ出すことを目的とする。
方法 用水路周辺環境について、用水路の構成材、植物の分布、柵の種類、用水路が道に面しているか否かなどを集合させた分布図を作成し、その水路の特徴と、周辺環境との関係性を見出す。住宅街を流れる用水路の断面図を描き、幅、深さ、どのような素材で作られているか、さらに周辺住宅までの距離と住宅の高さをはかり、水路可視斜線を導出する。そして日野の住宅地に張り巡らされた用水路網が建築とどうかかわっているのかを考察、それらの空間構成を分析し評価表を作成した。
結果 日野市内を流れる各用水路を上流から下流まで踏査した結果、ある特徴が見られることがわかった。まずあげるのは、「水路に面する住宅へのアプローチの仕方」である。水路左右の道路率は下流に向かって左側が高い。すべての用水路は概ね西から東へ流れている。つまり左岸が北になり右岸が南になる。よって水路左岸の道路は、橋を造らずに容易に南向き住宅地にアプローチできるからである。橋を架けるタイプでは、並行隣接道路が水路のどちら側にあるかを調べてみた。結果は右(南側)にくるものが多い。このことは、左岸に住宅があり右岸に道路がある場合、前述の方位性から水路と道路が住宅の南側に位置する。つまり、住宅の南正面空間を大きくとり、北側斜線の陰が離れるという一般的概念からそのような状況になったのだということが推定できる。
「各用水路の周辺環境要素の比率分析」を行った図[水路別環境要素分布図.pdf]、[見本分布図.pdf]からは、次のようなことがわかった。向島用水路は植物分布が多く、新井用水路では石造りの護岸が多くなっているなどの特徴が出てくる。
 次に用水路の全てを合計し比率化させたものでは、用水路沿いの建物の割合は現在5割ほどである。また、農地の割合も、日野市では3〜4割と高いことが分かる。
 護岸素材を比率化すると、コンクリートが6割を超えている。 
 柵の種類では、ガードレールやネットフェンスなどの柵が6割程度あるということが分かる。
 植物分布の比率では、3割程度の分布であった。
周辺環境の宅地化
 左岸と右岸の環境を比較してみると、右岸に比べ左岸に建物が建つ割合が高く、逆に農地や森林、空地などは右岸の割合が高いということが出てきた。左岸が北に、右岸が南になることをふまえると、左岸は宅地化され、右岸は農地を残す傾向にあることがわかる。この傾向は、日照に関係があるだろう。例えば、南側に水路や道路がきて奥行きのない住宅地の場合、南側にゆとりがとれるので日陰を避けることができる。そのような住宅地ニーズから形成されることであろうが、1団地としてまとまった住宅地が確保できる場合は、この限りではない。
水路―住宅地の断面図をとおして
 用水路の断面図[断面写真の評価の説明.pdf]を取り分析を行った。親水性という視点からでは、デメリットとして堀の深い水路、柵の高い水路、水路空間の私的使用、水路の見えない護岸形状が多く見られた。しかしこれらの問題点を克服できる良い例もあった。堀の深いところでは水路自体に歩道をつくっていることや段を下げた歩道、植物の植込みとしていることや、危険度の少ない水路では柵をなくしたり、低い柵にしていること。住宅地への水路上ブリッジでは相互間隔を多めにとっていること。歩行用の測道をつくることによって、水路を安心して見ながら歩ける状況をつくっていること。護岸の形状を「引き護岸」にして親水性を高めていることなどがある。
コンクリート垂直護岸から自然護岸へ
 用水路の分布図を作成した結果、現在流れている用水路では、コンクリート護岸の割合が6割を超える。中でも、コンクリートの垂直護岸は機能を充足しているが、親水景観的に見て良いとはいえない。今後、予算措置が必要であるが、コンクリート護岸になっている部分を、景観から考え石や土の護岸にしていく必要があろう。特に、人目に付き通行量の多い道路に隣接する部分を中心に改善して行くべきである。
暗渠から開渠へ
 戸建住宅へ橋を架けてアプローチする住宅街があることがわかったが、このタイプは分布図を見てもわかるように橋が密集しており、水路の存在自体が薄くなっている。この点から、住宅地に潤いを与えるという水の要素が弱くなり、景観を考える上では一考を要する。
 分布図を作成することで多くの暗渠になっている部分も明らかになった。用水路の総距離に対し約1/5は暗渠や橋によって地下に隠れている。今後、暗渠を開渠へと変えていく必要があると考える。まずその方法として、側道がある場合は、暗渠蓋を取り外すことが出来るので、そこから改修が可能である。
評価表から〈水路と住宅地の短所と長所〉
短所と思えること
・ ただ水を流すというだけの存在であること。
・ コンクリート護岸の割合が高いこと。
・ 落下防止のためと景観に合わない柵をただ設けるという状態が多く見られること。
・ 住宅へ橋を架けてアプローチすることで、水路が隠れてしまい水路の存在自体が薄くなっていること。
長所と思えること
〔全体的なこと〕
・ 住宅街にも小さくはあるが農地を残しており、空地の確保とともに水路を利用していること。
〔部分的に存在すること〕
・ 駅までの道のりに水路が造られており潤いを与えていること。
・ 歩行者の視線が向くところを石積み護岸や、土の素掘り護岸にしていること。
・ 住宅地の囲いに植物囲いが見られること。
今後の用水路のあり方
護岸
・ 景観上から捉えれば、コンクリート護岸から→自然護岸へと変える。

・ 用水路に設けられている景観に合わない柵を無くし、植物柵や木柵に変えていく。
・ 住宅地の柵は植物柵に変える。
水路と宅地の関係
・ 水路を見えるようにするために、水路を引き護岸などにして斜線限界を大きくし、宅地から見えるようにする。
・ 一般的に宅地では陽の入らない北側に窓を設けないが、水路が宅地の北側を通る場合、水路への関心が高まめるために、北側にも窓を推奨する。
計画的視点
・ 洗い場など昔の風景が消えてしまったが、親水性を考慮し朝市の行われている所などに、復元させていくと良い。
・ 学校ビオトープは一部すでにあるが、立地的に可能な小、中学校、住宅地でのビオトープを増やしていく。小さな自然をまちに取り込むことによって、日常の環境教育の場としてゆく。
・ 静かな場所を設けて様々な水音を楽しむスポットを作る。
水源に近いところではワサビやクレソン等がとれるようにして、水をただ流すというだけではなく食の楽しみや職によるまちの活性化を図る。住宅地際には、水による境界のある住宅地を作る。親水公園や使える水辺を目指して多様な景観を創出していくべきである。

[水路別環境要素分布図]
[見本分布図]
[断面写真の評価の説明]

 

   

 

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