◆◆都心河川フォーラム2007◆◆ 日時:2007年10月13日(土)13:30 〜 17:00
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都市河川フォーラム2007 総評 100名を超える様々な立場の方々が集まり、活発な意見交換が行われ、大変刺激的なフォーラムとなりました。 三つの分科会(ワークショップ)に分かれた後も、それぞれテーマは異なりますが、いずれも目指すところは同じで、視点も共通するところが多く、同時に「ポスト都市河川―今、何が必要か?」といった全体のテーマにおいて、それを打開するためのキーワードがいくつか創出することができたと思います。 とくに、まず<現状分析>が重要であるという点は、共通の認識として欠かせないでしょう。また、<原風景>に焦点を絞り、歴史的な観点からの再生が重視された点も見逃せません。環境の観点から、江戸東京を<エコシティ>として位置づけることも大切です。 かつて、東京の水と水辺は多様な活用がなされてきました。そこには、使用する人に明確な責任があって、また同時に水辺が交流の場となっていたわけです。つまり、都市の様々なアクティビティは、常に水辺に展開してきたと言えるのです。ところが、近代化の過程で、都市は急激に水辺を切り離し、合理性だけが追求されてきました。そして、いま、水辺を急速に回復しようとする時代が訪れ、そのなかでの問題点も浮き彫りになっています。 たとえば、最近では水辺の価値が再認識されたため、不動産価値が上昇し、中高層マンションが林立するようになって、多くの場所でそうした開発行為が断続的に進められています。本来であれば、こうした動きに対する規制を行政側がいち早く行うべきであったと感じています。しかしながら、水辺の再生にとって、経済との関係性を無視することはできません。むしろ、議論においても、そうした社会性や経済性を考慮したリアリティの認識が必要なわけです。 さて、三つの分科会でとくに話題になったのが、分科会1「都市河川を賑わいの場と観光資源に!」では水路の浚渫の問題、分科会2「市民と共につくる明日の東京の川」では水質の問題、分科会3「川と岸辺から考える景観づくり」では元町公園に対する個別例が取り上げられました。そうしたなかでも、やはり水循環、景観、水辺の集まる場所という共通したテーマが話し合われています。 とりわけ、どの分科会でも「つなぐ」というキーワードが共通しています。人のネットワーク・連携、また水の源流・上・中・下流といったように、人と人、水と水、モノとモノを「つなぐ」ことに注目が集まったことは、とても興味深いと言えるでしょう。分科会1ではループで捉えることが、分科会2では外濠のネットワーク・回遊性が、分科会3では元町公園を中心とした周辺とのネットワーク・ルートの重要性がそれぞれ主張されました。そして、歴史をきちんと知ることが再認識され、そのためのフィールドワークが有効な方法として確認されたのです。また、人の集まる場所を創出し、そこで行政・企業・地元住民・NPOなどが一同に会することで、水辺は人々を「つなぐ」ための最もふさわしい空間となります。さらに、川は区境を流れていることが多いわけですが、桜橋の実現や江東墨田のあり方、水上バスのように、それをボーダレスにするための活動や行為も重要です。 もう一つ重要なキーワードに「複合化」があげられます。水質調査、イベント、環境改善といった異なる活動を複合的に捉えながら同時に実施することが求められるわけです。たとえば、徳島のように、ドブさらいをして水をきれいにし、そのあとに劇場を作り観劇を行い、さらにはその活動を行政が評価し支援するという好例があります。こうした活動を通して、次に水辺の日常的な活用が目標となります。そこには、経済的な採算性や舟運の活発な利用、規制の緩和が付加されなければなりません。そうした意味では大阪の例も参考になります。 総じて、「歴史的な価値の掘り起こし」が様々な部分で行われる必要があります。水辺も含めて都市全体が展示空間となり、全員がそこに興味を持ち参加して、次の時代へのインスピレーションを得る場所とならなければなりません。ヨーロッパの港町が、そのよい事例を示しています。オランダや、たとえば横浜のような<クリエイティブ・シティ>と言われる理念です。歴史的な建造物の倉庫などをリノベーションして活用し、その水辺に交流が生まれ、さらには経済活動が付随していく。そのような空間に若い人々も集まり、バイタリティにあふれ、そしてまた次の新たな水辺が創出されていくのです。 今回の都市河川フォーラムでは、実に様々な立場から多様な視点が出され議論されました。これこそ、まさに水をテーマにしたネットワークの創出に、とてもふさわしいフォーラムであったと言えるでしょう。今後も、このネットワークを継続し、さらに強固になっていくことが期待されています。 |
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