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総括・戦略プロジェクト、都心・ベイエリア再生プロジェクト合同研究会

日時:2007年5月28日(月)18:00〜20:0013:00〜18:00
場所:法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー26階A会議室

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「地球都市東京 −都市構造転換における資本と国家の役割を再評価する− Tokyo-as-World-City: Reassessing the Role of Capital and the State in Urban Restructuring
ポール・ウェリー(リーズ大学環境学部地理学科教授

 近年、東京では、100メートル以上の超高層ビルが150棟を超えた。不況といわれていたにもかかわらず、この現象の背景にはどのような意味があるのだろうか。同時に、東京における都市構造の転換を地球規模で考えると、どのように理解できるのだろうか。
 これまでの研究では、東京は都市成長の方向性と都市構造の転換を進める際に、官僚を中心とした国家が最も重要な役割を果たすとされてきた。しかし、東京の都市の構造転換における国家と市場の役割は、ニューヨークなどの他の地球都市とそんなに変わらず、国や第三セクターよりも民間会社が果たす役割が非常に大きいといえる。つまり、資本の投入により都市の成長が牽引され、国家はインフラを整備するとともに規制を定めるなどの構造転換の舵取りを行っているのである。ただし、日本では、建設関係の資本が特異な形で都市の開発が進められたことは、大きな特徴であるといえる。そして、開発国家である日本では、国家が産業を促進する計画を立案する役割を担ってきたが、都市計画においては非常に弱い統率力しか持ち得なかったことは特筆すべきである。
 これまでの東京の都市再編は、三段階の地理的な空間の広がりの中で行われてきたといえる。第一に、関東平野に位置し、東京湾に囲まれた地域的な規模であり、第二に、様々な機能が複合する地区としての規模であり、第三に街区や敷地レヴェルの規模である。この中で、今回は二番目に挙げた地区レヴェルに注目し、開発主体と手法の変遷について見ていくと、三つの時期、すなわち1960年代初頭から80年代初頭、1980年代初頭から90年代半ば、1990年代半ば以降、に分けることができる。
 まず、1960年代初頭から80年代初頭にかけての代表的な事例としては、東白鬚と西白鬚再開発地区がある。この時期は、国家と都庁が開発主体となり、法律により大工場を都市から追い出し、その跡地に住宅団地が入るということが行われた。次に、1980年代初頭から90年代半ばにかけては、当時の中曽根首相が都市に関する建設と開発のルールを緩和したことが大きな要因となり、大川端リバーシテイ21や恵比寿ガーデンプレイスなど第三セクターが中心となってプロジェクトが進められた。そして、住宅だけでなく、学校などの周辺環境もあわせて整備する開発が行われた。次の段階である1990年代半ば以降は、専ら民間企業が中心となり都市再編が進められた。その背景には、2000年前後に多くの規制が緩和されたことがあるが、とりわけ2002年の都市再生法が大きな影響を与えた。代表的な事例としては、六本木ヒルズや汐留があるが、多くは元貨物駅などの公共施設の跡地を利用している点に特徴がある。開発主体は住宅と商業施設などが複合するプロジェクトであることを強調するが、住宅の戸数は少なく、賃料も非常に高く設定されている。
 このように東京の戦後の都市開発は、20世紀最後の三十年間に国と資本の役割が大きく変わってきたといえる。この三十年間の国家と資本の関係を整理すると、1970年代は政府が広い意味で自分が描いた社会のニーズを果たすために行なわれたといえ、1980年代は主に国と企業のパートナシップの結果であったといえる。そして、1990年代半ば以降は、民間企業が都市の土地を資産としてお金を稼ぐ道具とみなし、都市開発を進めている状況にある。東京の超高層ビルは、こうした中で登場してきたわけであるが、規制緩和、とりわけ容積率の緩和が超高層を生み出す牽引力となっている。そこには、地方行政庁が定めるべき建物の高さ制限などの地区計画は存在せず、従来、日本では産業の促進に力を注いできたのに比べて等閑視されてきた都市計画制度をさらに弱体化させているといえる。また、近年の民間企業が主体となって都市開発が進められ、超高層ビルが林立する状況は、世界規模で見た場合、資本の出所が大きく異なり、きわめて特異な現象である。こうした傾向はいつまで続くかわからないが、必ず終焉を迎えるはずである。

[1960年代以降の東京における主要な都市開発]

 

   

 

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