報告者:西田一也(東京農工大大学院連合農学研究科水資源計画学研究室)
テーマ:「日野市における魚類の生息環境としての農業水路・水田の実態と今後の展望」
日野や八王子の農業用水と田んぼにおける魚類の生息環境としての実態を調査研究し、そこからどういった水辺にしたら良いのかということを研究テーマとして行ってきた。
日野用水は、多摩川から取水しているため種類数が多く、その中に希少種や絶滅危惧種が含まれている。構造は、ほとんどがコンクリート2面張りとなっているが、沈水植物が生育して、流速が小さくなり砂泥がある環境を作っていることから、ジュズカケハゼなどの魚が田んぼから出てきても、棲めるのではないかと推測される。土水路である部分は少ないが魚類の繁殖、生育の場として機能しているということから、そういった場所を残すということは重要である。豊田用水も日野用水と似たような状況である。平山用水は、それと全く逆の傾向で、ほとんど3面張りになっているので、田んぼがあっても水路で越冬ができないので、水田で魚が繁殖できない状況が起こっていると思われる。向島用水は平山用水と似て、水深が浅い水路で、沈水植物もあまり育たないが、自然護岸の区間があるために抽水植物があって魚類の生息環境として機能していると考えられる。この結果から魚類の繁殖の場としての水田が非常に重要であるということがわかる。
いくつか提案を書いてみた。改善できればということとして、冬季に越冬の場が少なく、魚類が個体群として安定できないという状況が考えられる。そこで、魚類の越冬環境や越冬場を特定するということ。水路の整備としては冬もある程度水深が保たれて、水が枯れないような場所を作っておくということが必要である。また非灌漑期も取水や分水するための堰を田んぼや支線水路に分水する堰を設置しておくこと。橋の下に魚はたまっているということが分かっているので、そういった場所を掘り下げておくなど、そういったことを市民の手で行ってもよいと思う。
田んぼについて見てみると魚類の繁殖の場として機能をまだ失っていないということが分かったので、水田は保全し水稲が行われるようにしておくこと。水田に出入りして中で繁殖して、脱出できるようにしておくこと。水田周辺を魚類が越冬できる状態にしておくこと。そういうことを考えると、向島用水親水路のような整備からよそう森堀のような水田と水路を一体とした整備といったものへ整備の仕方を工夫していくことが良いのではないかと思う。
農業水路と河川の連続性を見ると、春になるとコイ、フナ、ナマズなどは河川から、取水口を通り、農業水路へと産卵のために遡上してくるということが分かっているので、その間を自由に移動できるようにしておきたいが、水路が河川に排水しているところは落差がある場所がほとんどで難しい。一部魚道をつけている水路もあるがこれが本当に良いのかまだ分からない。ポンプで揚げる取水ではなく、河川に堰を作ったかたちや自然流入で行われるように今後もしていきたい。排水の付近について、上流の方まで上ってこれなくとも、排水から数〜10mくらいのところに魚類が遡上できて繁殖できるようになっていれば、それだけでも十分に良いのではないかと考えられる。
*詳細は2006年度末報告書「水の郷日野用水へのまなざし」に掲載 |
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[表1
日野の農業水路で採集された魚類]
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[表2
日野用水・根川における魚類の分布]
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[表3
日野用水・根川における夏期のドジョウ、キンブナの分布]
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