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第4回 日野プロジェクト勉強会
テーマ:「エコロジーの視点から日野の水辺を学ぶ」

日時:2006年10月19日14:00〜17:00
場所:法政大学小金井キャンパス西棟会議室

 

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報告者:西田一也(東京農工大大学院連合農学研究科水資源計画学研究室)
テーマ:「日野市における魚類の生息環境としての農業水路・水田の実態と今後の展望」

 日野や八王子の農業用水と田んぼにおける魚類の生息環境としての実態を調査研究し、そこからどういった水辺にしたら良いのかということを研究テーマとして行ってきた。
 日野用水は、多摩川から取水しているため種類数が多く、その中に希少種や絶滅危惧種が含まれている。構造は、ほとんどがコンクリート2面張りとなっているが、沈水植物が生育して、流速が小さくなり砂泥がある環境を作っていることから、ジュズカケハゼなどの魚が田んぼから出てきても、棲めるのではないかと推測される。土水路である部分は少ないが魚類の繁殖、生育の場として機能しているということから、そういった場所を残すということは重要である。豊田用水も日野用水と似たような状況である。平山用水は、それと全く逆の傾向で、ほとんど3面張りになっているので、田んぼがあっても水路で越冬ができないので、水田で魚が繁殖できない状況が起こっていると思われる。向島用水は平山用水と似て、水深が浅い水路で、沈水植物もあまり育たないが、自然護岸の区間があるために抽水植物があって魚類の生息環境として機能していると考えられる。この結果から魚類の繁殖の場としての水田が非常に重要であるということがわかる。
 いくつか提案を書いてみた。改善できればということとして、冬季に越冬の場が少なく、魚類が個体群として安定できないという状況が考えられる。そこで、魚類の越冬環境や越冬場を特定するということ。水路の整備としては冬もある程度水深が保たれて、水が枯れないような場所を作っておくということが必要である。また非灌漑期も取水や分水するための堰を田んぼや支線水路に分水する堰を設置しておくこと。橋の下に魚はたまっているということが分かっているので、そういった場所を掘り下げておくなど、そういったことを市民の手で行ってもよいと思う。
 田んぼについて見てみると魚類の繁殖の場として機能をまだ失っていないということが分かったので、水田は保全し水稲が行われるようにしておくこと。水田に出入りして中で繁殖して、脱出できるようにしておくこと。水田周辺を魚類が越冬できる状態にしておくこと。そういうことを考えると、向島用水親水路のような整備からよそう森堀のような水田と水路を一体とした整備といったものへ整備の仕方を工夫していくことが良いのではないかと思う。
 農業水路と河川の連続性を見ると、春になるとコイ、フナ、ナマズなどは河川から、取水口を通り、農業水路へと産卵のために遡上してくるということが分かっているので、その間を自由に移動できるようにしておきたいが、水路が河川に排水しているところは落差がある場所がほとんどで難しい。一部魚道をつけている水路もあるがこれが本当に良いのかまだ分からない。ポンプで揚げる取水ではなく、河川に堰を作ったかたちや自然流入で行われるように今後もしていきたい。排水の付近について、上流の方まで上ってこれなくとも、排水から数〜10mくらいのところに魚類が遡上できて繁殖できるようになっていれば、それだけでも十分に良いのではないかと考えられる。

*詳細は2006年度末報告書「水の郷日野用水へのまなざし」に掲載

[表1 日野の農業水路で採集された魚類]
[表2 日野用水・根川における魚類の分布]
[表3 日野用水・根川における夏期のドジョウ、キンブナの分布]
 

報告者:山本由美子さん(浅川勉強会)
テーマ:「水循環を取り戻す」

 私たちはこのまちのまちづくりに水循環を取り戻す活動をしている。
 「現地観測に基づく日野市の水環境保全に関する水文学的研究」では、井戸をはかりながら、その中で地下水にどのような動きがあるのかということを手探りにやってみた。日野駅のホームの近く、中央高速の台地の上、程久保川の下流部の井戸、そのほか様々なところを調査した。(図1)
 程久保川と多摩川との合流点にワンドを提案した。水郷水都全国会議というのがあるということで、専門家の方、市の小笠さんなど大変努力していただき、4ヶ月くらいで仕上がった。何年か経つと草木が繁って、魚も本流の程久保川に比べると、何種類か多かった。
 植生調査も行う。新井橋の下で、10m四方で植生がどのくらいあるか調べてみた。10m四方の中に54種類あった。当時あったキツネノカミソリ群落は今では見られない。再三お願いはしたが草刈る人たちが念入りに刈るので、消えていく。このように土も緑も生物もひとたび失うと、本当に取り戻すために莫大な費用と時間がかかる。中には取り戻せないものもある。
 日野の丘陵地や台地、沖積地などの異なった3つの大きな地形が、私には売り物だと思う。水については大きな川が2つもあり、用水、地下水、いろいろな湧水地、井戸が残っている。これも生かさない手はない。高低差が大きいということは、また見たこともない景色があるということ。雑木林や畑があったり、万華鏡みたいで東京近郊でこれほど魅力的なまちはないと、私は心底そう思う。その価値観を共有しなくてはならない。では何をしたら良いのか。私は台地、丘陵地を結んだ、様々な水を結んだ、緑を結んだ、そういう仕組みをマップにして皆さんに残していきたい。いろいろな私たちが関わってきたことも、一緒にやっていくことで維持になる。それをチームとして研究者、市役所、河川管理者、農協、農業者、市民、NPO、教育者も入って一緒に様々な仕掛けを作って、その仕掛けの中から生まれた様々な事柄を実施したり、皆さんに知ってもらうために様々なことを立ち上げたりするそういうような場所をつくりりたい。
 日野らしい、懐かしいけれどもとてもハイカラな所もあると、その中で食の自立、職業の自立、そしてまちの自立につなげたい。農地が極端に減っている。もう残らないとして諦めれば終わりである。日野を魅力ある土地として残したい。一番魅力があり、日野だから残っている地形と職業としての農地。それと用水の中に生き物がいる。生き物がいる用水として、これはとても売りだと思っている。
 もう1つ浮上してきている問題が、浅川の山田川のすぐ側に北野下水処理場の閉鎖問題がある。あまり放出処理水の水質はよくないが、それでも冬期の浅川への水量が100%だとするとその水量の40%を占めている。そこを閉鎖するという八王子市の案がある。どうにかして避けたいと思うが、もしそういうことになった時にも、浅川の水量を上げるという方法を、専門家も交え話し合い実現していかなければならないと思う。やはり上流の人と一緒にやらなくてはならない部分がある。上流は関東山地や丘陵地がある。そこからくる伏流水が日野の財産である。

*詳細は2006年度末報告書「水の郷日野用水へのまなざし」に掲載

[表1 観測井戸]
 
   

 

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