報告者:深澤 司(東京都農業協同組合中央地域振興部審議役)
テーマ:「都市農業の意義」
都市農業とは何か
都市農業というのは、農水省が平成11年の7月新しく「食料・農業・農村基本法」をつくり、その36条の2項の中に、「都市及その周辺の農業」という言い方をして都市農業を一応定義している。市街化区域の中の農業というのが都市の農業ではないのかと私は思う。農水省の施策としては災害復旧程度で長期の融資もやらない。一方、建設省は、線引きをした市街化区域の中は、全て宅地という扱いだと断言した。
都市の農業について平成5年に実施したアンケート調査がある。その当時、農地を保全すべきだと答えた人が7割歩ほどいた。平成16年の調査では、9割の人が農地を残して欲しいと答えている。平成16年には、「今ある農地は全て残してほしい」というのが41%。「一生懸命やっている農家の農地は残してほしい」というのが48%である。農地に期待することは何かというと、新鮮な農産物の生産をしている場所がトップにきている。緑や景観、自然環境を維持するために必要だ、期待するが42%、それから子供の教育や農業体験の場が20%。この3つくらいが、市民の農地への期待である。
農地と制度の問題
農地の固定資産税は、生産緑地に指定すると農地評価、農地課税になる。生産緑地でない農地は、同じ面積で固定資産税と都市計画税が宅地としてかかる。相続の時には、農地に限って相続税の納税猶予制度がある。その制度を使えば、農業投資価格10aあたり100万円として評価するが、生産緑地でないと猶予制度が使えない。しかも、死ぬまで農業をやらないと免除にならないという大変にきびしいものである。
また農家は、農業に使う宅地部分もあるが、物置だとか車庫だとか農作業場だとか、自分の宅地や屋敷林もある。猶予制度を使ったとしても、宅地の税金を払わざるをえない。家屋敷を売るわけにはいかないから、農地を売る。そのため相続があると農地が激減する。
これからの都市農業
これからの農業のあり方としてやはり農業生産の場がまず根本にあると思う。そのほかに農地が持っている多面的な機能と呼ばれる部分がある。都市だからこそという部分も多い。
一番注目されているのが、防災のための一時避難場所としての農地。延焼を防ぐ防災機能、緑としての機能は農地にしておけばローコストで緑を保全できる。水田、水路の維持管理もみな農家の犠牲の上に成り立つ。学校教育、教育機能も注目されている。景観的な機能、特に屋敷林の問題をどうするのという話がある。市民に開放された農業ということで練馬区では12、3年前から始めた農業体験農園がある。年間一区画30m2で4万円程度の利用料である。そのような農家が、東京で35戸くらいある。農家が経営としてやれば、これは利益にもなるので、むしろ喜ばれている。そこではコミュニティーができる。コミュニティーを作れるような農業を目指すべき。これからの新しい農業というのは、都市だからこそできる農業で、そこに意義があると思う。
昭和一桁の人たちが東京の農業を今までずっと支えてきてくれたが、これから正念場が来る。そういう意味でも市民の応援をいただきながら農業が続けていけるような農業ができればいいかなと思う。 *詳細は2006年度末報告書「水の郷・日野/用水路再生へのまなさし」に掲載 |