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歴史プロジェクト研究セミナー
「中庭型住宅の研究―地中海世界と中国、そして日本の比較」

日時: 2005年10月4日(火)18:00〜21:00
場所: 法政大学市ヶ谷校舎ボアソナードタワー25階B会議室

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「中庭型住宅の空間論―古代ローマと中国の比較を中心に」 ルイジ・ガッゾーラ(ローマ大学教授)
古くから文明の発達しているところでは共通して中庭型住宅が見られる。その中庭型住宅がどのような必然性、必要性のもとに形成されたかについて、古代ローマと中国を比較しながら話がなされた。
まず、都市においても住宅においても周囲を壁で囲むということは、外の世界からの防御、たとえば気候の変化や外敵などから守るという目的のために作られるものである。そしてさらに、壁は守るだけでなく、空間を仕切って、そこに秩序を与える役割も果たしている。
古代ローマの住宅は、はじめ独立した住宅の周囲を壁が囲んでいたが、次第に部屋で周囲を取り囲み、中庭型住宅が形成されていった。部屋はシンメトリーに配列されていたが、それぞれの部屋は決まった機能を持っていたわけじゃなく、様々な機能を受け入れられた。一方、中国の中庭型住宅も部屋のシンメトリーな配置や明快な軸線という共通性を持っていた。こういった空間構成の概念は、中国・古代ローマには見られるが、他にはあまり見られない。しかし、中国では部屋ごとに機能があり、広さも機能によって異なる。中国には空間のヒエラルキーがあり、父権が強く、年寄りを尊重するという儒教の教えがその背景としてある。
古代ローマでも、はじめは動物や農具なども居住空間と並列であったが、その後仕切られて、居住空間の外へ展開していく。両親の寝室には炉が置かれ、その後の発展でも夫婦の寝室には重要性・象徴性が変わらずに付されていく。そして、住宅の前面には店舗が設けられ、裏には果樹園ができる。そして、住宅には2つの中庭を持つようになり、入口近くの中庭は人が集まる場所として、奥のポルティコがある中庭は家族が集まる場所として使われるようになっていった。中国では南向きであるが重要視され、まずは敷地の北側に夫婦の居室が作られ、西側、東側に子供たち夫婦のための居室が作られる。北向きは中国で不吉な方角とされているため、居住以外のための部屋が置かれる。やがて中国でも、前庭、裏庭が設けられていく。門から折れ曲がるようにして前面の小さな前庭に入る。そこは守衛がいたり、接客をしたりする空間であった。そのため、一番重要な門は前庭と中庭の間の門になっていき、それは中庭型住宅の南北の軸線を形成する重要な要素でもあった。
さらに奥へと、中庭とそれを囲む居室がひとつのユニットのようにして、同じ空間構成で増殖していく。このように、古代ローマと中国では、中庭型住宅の軸線と空間構成において共通性が見られる一方、拡張の仕方や住宅への入り方などには違いも見られる。
さらに現在の中国の住宅と都市を分析する際、ジャンフランコ・カニッジャの建築類型学を応用することで、袋小路や細街路が入り込んだ北京の住宅街のなかに、かつての大きな中庭型の邸宅を復元することができた。そして、そこから現在のように複数の家族が分割して住むようになった過程を考察していった。このようにして地域の特性を理解することは今後の都市と建築の再生に活かしていくうえで、ベースとなるだろう。

[西洋の中庭型住宅]
[中国の中庭型住宅「四合院」]
[同じ空間構成が繰り返される中国の中庭型住宅]
[北京での都市調査。かつての大きな中庭型住宅を復元した。]

 

   

 

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