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歴史プロジェクト第6回研究会

日時:2005年3月18日 19:00〜21:00
場所:法政大学市ヶ谷校舎80年館7階大会議室

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「日本の川づくり:自然と風景をどう調和させるか」
Building banks for Japan's river : Which comes first, beauty or the beasts?
Paul Waley
土建国家日本は、50年代から70年代にかけ、治水のために多くのダムをつくり、カミソリ堤防や三面張りの堤防で水辺を消していった。また、不要河川であれば暗渠にして川を道路に変えてしまった。しかし、80年代半ばから90年代になると水辺のもつ親水性が見直され、佃島のスーパー堤防や都市の中にいくつも親水公園がつくられた。それらは都市の中の心地よい空間ではあったが環境面から考えると問題点も多く指摘された。また、自然と生態系の守られた多自然型の川づくりについても日本の伝統的な手法やスイスやドイツの手法が紹介されが、このような川づくりもやはりいくつかの問題を抱えることになってしまった。その問題点とは、ひとつは自然を復元することは根本的に無理であるということ、専門家の不足、そして規模と予算の問題である。とはいえ、一般社会に水辺の重要性が認知されてきたことは90年代以降の多自然型の川づくりの大きな成果と言えるのではないだろうか。そして現在の川づくりは地域の住民を中心とした参加型川づくりに変わってきた。行政の面からみても川に面した街を結びつけ、市区町村を超え協力して川づくりのグループを形成している。このようなグループは大きな川ならば日本全国に存在している。
このように川を中心として集まった小さなグループで環境活動をすることは日本の市民社会の一つの大きな特徴であると言える。日本は国家や大企業の権力が強い国家型であるとか大企業型であると言われる。その中で市民社会はどのような位置にあるのであろうか。欧米では市民社会と行政は遠くかけ離れたものである。しかし日本における環境に対する市民社会は行政と市民社会が近い位置にあると言える。行政が市民社会を左右するというより、行政の立場を持ちながら行政の帽子を脱いで市民社会の帽子をかぶり活動する、ひとつのソフトエリートといえる存在がある。そのソフトエリートとは中央政府や地方行政の人物、大学教授といった有識者や建築家やランドスケープアーキテクトのような専門家からなり、行政に近いが行政であるとも言えないような存在である。彼らソフトエリートが川づくりなどの市民社会の環境活動の中心になっていることが多い。ただ、それに対してハードエリートも存在する。行政や建設業界に存在するこのような川づくりに無関心な彼らを無視してこれからの環境活動を続けることはできないだろう。これから自然と風景をどう調和させるかの大きな問題である。

[三面張り堤防]
[暗渠となった川]
[スーパー堤防]
[親水公園]
[参加型川づくり]

 

   

 

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