『ヨーロッパの事例を訪ねて』 古郡宏光
現代水辺建築を求めて、欧州10ヶ国を巡り調査し、現代建築と水辺の関係を、都市的な水辺建築と、水に対するデザインが強くでている水辺建築という、二つの視点から作品を紹介しながら考察していく。
第1章、都市的な水辺建築として、3つの例を見ていく。まず、テムズ川におけるウォーターフロント新開発ドックランズ(イギリス:ロンドン)は、ロンドンの記憶を残すことが最優先事項とされたため、造船用ドックの頃の大規模な水面を残した開発がなされ、水辺との接点が多いけれども、開発面積対してオフィスビルの床面積が十分に確保できないといった問題点も挙げられる。
次に、ローヌ川における国際都市(フランス:リヨン)では、以前リヨン国際貿易センター、会議場のグラン・パレとして機能していた敷地に、レンゾ・ピアノによって集合住宅や公共施設、商業施設を含む国際都市が計画され、かつてのグラン・パレを尊重した配置計画を残しつつ、かつては分断されていた公園と川をつながりのある計画としたが、眺望や動線の広がりにとどまり、川の要素を取り込んだ開発が今後求められるだろうと感じる。
最後に、ジェノバ港再開発計画(イタリア:ジェノバ)では、必然的に人がこなくなった港を、大通りの地中化によって都市からの流入のしやすさを確保し、大広場や埠頭と船を利用した水族館、倉庫を商業施設にコンバージョンするなどの整備によって、ジェノバの都市と港とのつながりができた。
第2章として、水に対するデザインが強くでている水辺建築を見ていく。まず、水を建築内部もしくは敷地に取り込み生活空間と近づけている例として、MVRDVによるSILODAMとボルネオ7区の住宅(オランダ:アムステルダム)を紹介する。まずSILODAMでは水辺に向いた集合住宅を計画し、水とふれあう場が提供された。ボルネオ7区の住宅は片側が道路、もう片方は運河に向く配置計画で、運河に面した1Fの部屋から張り出したバルコニーからは直接水にふれあうことが可能で、ボートが停泊してあったり釣りを楽しんでいる光景も多く見られ、やはり水辺に開く計画がなされている。
次に、川から水を引き込んでいるかのような人工池を設置している代表例として、グッゲンハイム美術館(スペイン:ビルバオ)では、美術館を囲むように人工池が配置され、特に川側では、まるで人工池が川から取り込まれたような擬似的場が生み出され、水面から太陽の反射光を浴びたチタン外壁の幻想的表層が印象深かった。
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[DOCKLANDS] |
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[リヨン市] |
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[ジェノバ湾再開発計画] |
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