『市民のもとめるモーダルシフトのまちづくり』
権上かおる
(自転車と路面電車と船運のまちづくりフォーラム、酸性雨調査研究会)
温暖化により地球レベルでその対策がもとめられている昨今、自動車の技術改良のみならず、代替交通機関へのモーダルシフトの可能性が注目されている。今回の発表では、市民の立場から、モーダルシフトの必要性とその可能性について、その背景、考え方、立場の位置づけとその可能性を示唆した。今回は、隅田川沿いの新聞工場建設に対し輸送方法代替案の提案などに取り組みを事例として紹介した。そして、今後の方向について考えを示唆した。
北区堀船は、明治・大正・昭和の戦前、隅田川の舟運で発達をし、戦後舟運衰退により、閑静な住宅街として形成された地区である。隅田川に面したその地域に、読売新聞印刷工場の建設が予定された。それに伴い、住民の公害への不安から酸性雨調査研究会と協力し、2001年12月から本格的な調査がはじめられた。内容として主に問題となったのは、騒音であり、新聞の配送のピークが夜中の12時から1時、夜中にトラックの騒音が発生する。この問題を解決するため、まず、隅田川物流実験が行われた。新聞印刷用ロール紙の輸送方法について、11tトラック49台による陸送と河川用船舶(180t)による隅田川舟運とを比較するための実験である。速度、燃料、消費量、二酸化炭素排出量、コスト、人間生活への影響などが調べられた。その結果、舟運活用への効用を数量的に示した輸送方法代替案を、市民からの「もう一つの環境影響評価書」として東京都に提出している。
調査を進めていく経緯で、東京都の公害調停において、3,637名の公害調停申請者を集めるなどしている。その間、国と自治体との対応の差、関係者以外への認知を広げる困難を経ている。
首都圏における市民団体は、隅田川市民交流実行委員会の隅田川に白魚をもとめる団体のように、川の文化・水質・自然保護に関する市民団体が多い。その中で、市民活動としてのモーダルシフト(物流・舟運)の位置づけは、国内においては例がない。
「世界水フォーラム」において「川と交通」内陸水運の分科会の国内委員として参加することとなる。世界各国から様々なテーマをもった人々が集まる中で共通したのが、舟運に対するメリット(省エネルギー・防災・水辺環境・モーダルシフト)と阻害理由(費用・認識不足・港湾設備の不足・河道の未整備・船と陸路の接続)である。
最近では、韓国・ソウル市の清渓川で、高架道路を取り払い都市河川を復元する事業が、世界的にも注目を集めている。日本においては、海に囲われたセイロカタワーの工事、北千住西口の再開発において舟運が利用されるなど少しずつ舟運への動きがでてきている。
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