【開催報告】
法政大学江戸東京研究センター特別対談企画
「日本問答・江戸問答」
■日時 2018年4月21日(土)14:00〜17:00 (開場13:00)
■会場 法政大学市ヶ谷キャンパス 外濠校舎6階 さったホール
■主催 法政大学江戸東京研究センター
■後援 岩波書店 編集工学研究所
■出演 田中 優子(法政大学総長) 松岡 正剛(編集工学研究所所長)
■コーディネーター 陣内 秀信(法政大学デザイン工学部教授、江戸東京研究センター初代所長)
「日本問答・江戸問答」は2017年11月に法政大学総長の田中優子先生と編集工学研究所所長の松岡正剛さんの対談『日本問答』が岩波書店から刊行されたことを記念して行われるもので、EToS初代所長の陣内秀信先生がコーディネーターを務めました。
今回は、前半に田中優子総長による講演「江戸の編集方法」及び松岡正剛氏の講演「日本の編集力」が行われ、後半に陣内先生を進行役とするお二人の対談「江戸力・日本力」が行われました。
講演及び対談の概要は以下の通りでした。
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(1)田中優子/「江戸の編集方法」
「内の中に外を取り込み、内を広げた江戸時代」という考えに基づき、「見立て」、「やつし」、「もどき」を手掛かりとし、外国を含む外部の文物を積極的に取り入れながらも外来の要素に飲み込まれなかった江戸の文化の特質を俳諧、連歌、芝居、浮世絵などを通して検討し、様々な要素が排他的ではなく併存する「デュアルな江戸文化」のあり方を実証的に考察した。
(2)松岡正剛/日本の編集力
500年続く江戸東京という世界でも珍しい都市を手掛かりに、江戸時代には様々な優秀な文化人や学者がいたものの「グローバリズム」や「ユニバーサリズム」には馴染まなかった日本のあり方を「漢と和」や「神仏習合」といった「デュアル・スタンダード」の観点と古今東西の文献などを渉猟した成果に基づいて検討し、11の「日本人の発送構造」を提起した。
(3)田中優子・松岡正剛/江戸力・日本力(進行:陣内秀信)
実際には利用される頻度は多くない場合でも「利用されること」を前提に次の間を設ける日本と、建造物が名所の中心であり、名所と記念碑が連続性を持つ欧米、建築物だけでなく景観や雰囲気さえも名所とする日本の独自性、あるいは江戸という都市が持っていた「ユニークさ」について、資料や実体験に基づいて意見が交わされた。
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今回の講演と対談を通して、「やつし」や「見立て」、あるいは「もどき」といった概念が江戸時代の人々に与えた影響の大きさと、これらの概念が「擬態」や「ミミック」といった編集上の概念と通底し、現在の東京や日本にも大きな意味を持っていることが明らかになり、EToSの今後の研究活動にも意義深い会となりました。
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