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総括戦略プロジェクト研究会
「河川と海岸のニューデザインへのニューウェーブ」
  青森県大畑町における、公共工事への創造的反抗の証言

日時:2007年12月12日(水) 15:00〜17:00
場所:法政大学小金井校舎共同研究室

 

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「河川と海岸のデザインのニューウェーブ」
角本孝夫氏(サステイナブル・コミュニティ総合研究所、青森県大畑在住)

 ここの度、2006年度土木学会デザイン賞最優秀賞受賞、2007年度グッドデザイン賞金賞を受賞した。プロセスや考え方が評価されたものでこれまでの評価の枠組みを変えるという学会やGデザインの決心があった。
 大畑はイカの産地であったことからイカの文化見直しのために94年に「イカの文化フォーラム」を開催した。その年に「フォーラムin大畑」を組織し、その中で「森と川と海の委員会」や「歴史と神話の委員会」などたちあげ勉強会や観察会など続け、97年にはまちづくりの理念というべき「大畑原則」をまとめた。
 大畑川では直線化工事が行われたことで絶えず増水するようになり、川の生き物も激減した。96年に県の河川課に呼びかけ勉強会を始め、97年に具体的実践として近自然河川工法による再生事業を提案し、研修の名目で同工法による整備をスタートした。当日は土木、建築、行政、町民など100数十名が川の両岸を囲み水制構を作った。近自然とは川が自らの力で再生するよう少しだけ手を加え流れをつくってやること。お金をかけずに劇的に河川環境を変えていく。構造物として自己主張せず、5年から10年もすると消えてなくなる。岩鎮めと称して、つぶて合戦もやっている。ただ石を投げ入れているだけだが、8年も続けているとサケが遡上するようになった。川が再生したということである。
 キノップ海岸の再生は1999年に海岸事業としてどう整備するかという県からの話がきっかけだった。99年に海岸法が変り、防護のみだった理念に環境と利用が加わった。海岸法の3つの理念をどう達成するか県、自治体、NPO、集落、コンサル、海岸工学の専門家による18回の懇話会を開催した。専門家には如何に海岸特性などを地元にわかりやすく説明できるかという期待があった。懇話会でまずキノップはどういうところだったのか出してもらった。風景写真はないが記念写真の背景に豊かな磯場が写っていた。磯場には四季をとおした暮らしがあった。こうして磯場の回復について合意形成されていった。
 海岸に緩傾斜堤があった。当時の流行で防護のために出来たらしい。懇話会でこの緩傾斜堤を撤去したいという意見がでた。浜を行き来できない、高潮のときに波が這い上がってくるなどの理由からである。もともと国の補助事業でつくられたものである。これを県の単独事業で撤去となると適化法(補助金の適正化に関する法律)の問題があった。どのような論理で壊したかというと、防護しながら環境にも配慮し生かせればいいということで、壊したブロックを消波施設として転用することになった。それは磯場がもたらす消波効果がわかってきたからでもある。どう整備したかわからないような最低限の整備を目指した。しかし、発注者側はやったことがなく普通の工事費で出したので施工者側は過剰な工事をしてしまった。設計図では空隙率50%と書いてあるだけで、また検査が通らないので転圧をかけた。海岸法も河川法も住民参加、合意形成といいながら、住民は意見具申者程度としてしか扱われない。事業が決定するとその後の打合せには呼ばれない。建築は監理があるが土木は監理がなくコンサルに設計発注される。住民の合意がどこまで担保されているのか。合意とは異なる消波施設の変更を申し出ることになった。このことは土木学会の論文にもだした。潮通しを回復するために2度にわたり改良した。写真を元に石の配置を決めていった。「石は動いて安住の地を得る」。そして人が集まり始めた。海の底も再自然化した。海水温、塩分濃度、生き物調査などモニタリングも3年以上行っている。埋まっていた磯場が現れはじめた。キノップのケースが奇跡的なのか現在、科学的に一般化できるよう研究中。離岸提でみにくく変った日本の海岸線をかえていきたいと思う。

 

 

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