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エコプロジェクトミニ研究会 

日時:2004年10月28日(木) 18:00〜
場所: 法政大学市ヶ谷校舎ボアソナードタワー25階会議室C

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(1)タイの水辺住居の温熱環境(実測)                        
1.はじめに 
東南アジアには高床式住居が多く存在が,その高温多湿な気候における,高床式住居の環境工学的な有効性は明らかにはなっていない。
本研究は,川辺及び水上に建つ住居の川からの風による快適性,水上の住居の温度の快適性,川からの距離と温湿度・風などの影響の関係を明らかにするものである。川沿いの住居,水上住居,陸上住居の温熱・空気環境を測定し,比較検討する。また川沿いから川から離れたこところまでの複数のポイントで,環境測定を行なった。
2.実測概要 
2004年7月31日〜8月7日にタイのロッブリー,首都バンコク,ノンタブリにおいて実測を行なった。この時期は雨季にあたる。
ロッブリーはバンコクの北にある平地の都市である。ここでは川沿いから複数のポイントで温湿度,風を測定した。バンコクでは水上に建つ住居と陸上の住居を,バンコクの北西に隣接するノンタブリでは水上の住居を実測した。図1のバンコクの水上住居は川に面したテラスがあり,また床板には隙間のある通気性のよいつくりだった。図2のノンタブリの水上住居では川に突き出たテラスが特徴的である。ここでは川からの風がとても快適であった。
3.実測結果
(1)川からの距離と温湿度 
7月31日13時,8月1日1時のロッブリーにおける川からの距離と温湿度の関係について,13時には,川から0mの地点では,気温は約31℃となったが他は33〜34℃と2〜3℃高くなっている。湿度は0mの地点では68%で,その他の58%前後より10%高くなった。川の近くほど気温は低く,湿度は高くなったが,変化が見られるのは川から10m前後であった。
(2)水上住居と陸上住居の比較 
水上住居と陸上住居の快適性を温熱快適指標SET*を用いて比較する。表1にSET*を計算比較するための値,図3にその計算結果を示す。なお,表1の値は8月2日,3日の実測値である。水上住居の方が陸上住居よりも最大で4.5℃SET*が低い値となり,より快適に近いことがわかった。水上住居と陸上住居の間に,温度等の差はほとんどあらわれず,川から吹く風速の値の差が快適性の差になることがわかった。
(3)水上の住居の風向・風速の分布 
図4に8月7日13時のノンタブリの水上住居のテラスと室内における風向・風速の分布を示す。基準とする風速は床面から高さ4m,その他は1mの地点で測定した。テラスは全体的に風速が強いが,特に川に突き出たテラスでは基準の1.7m/sの半分近くの0.8m/sと比較的大きな値となった。
4.まとめと今後の課題 
川の気温・湿度への影響範囲は10mくらいで,川に近いほど温度は低く湿度は高くなることがわかった。水上住居は,床下が冷やされるため室温が冷やされる。またトタン屋根の住居の場合は屋根面の気温が高くなることがわかった。川沿いではテラスでの風速が大きくなり,川からの風による涼感が得られることがわかった。
また,Thai Meteorological Dept.においてバンコクなどの気象データ(1999年1月〜2003年12月の5年間)を入手した。今後は気象データの特徴を検討する。

 

[表1 SET*を計算するための水上・陸上住居の値(バンコク)]
[タイ水上住居写真]
[水上・陸上住居のSET*(バンコク)]
[タイ水上住居風配図]

 

(2)散水による冷却効果(実験)

1. 研究目的
屋根散水において,今までどのような要因が,どのように屋根散水の蒸発冷却効果に影響を及ぼすのかということは,明らかになっていなかった。そこで本研究では,散水量,屋根材料と気象の3つの要因が蒸発冷却効果に強く関係すると考え,蒸発冷却効果と散水量,屋根材料と気象の関係を明らかにすることを目的としている(図1)。
2. 研究方法
本研究では写真1に示す,比較モデルを2つ用いて実験を行う。一つのモデルには屋根に散水を行い(散水モデル),もう一方のモデルには散水を行わない(非散水モデル)。この2つのモデルを比較することによって屋根散水の効果を明らかにする。
表1に実験の条件を示す。散水量は,2,6,10,20,40kg/・hの5種類のパターンを設定した。屋根材料は鉄板とスレートの2つの屋根材を用いる。それぞれの実験条件について,違う日に2回ずつ実験を行うことによって気象と蒸発冷却効果の関係を明らかにする。実験は法政大学小金井校舎研究棟屋上において2004年7月〜9月に実施した。
3. 結果
・散水量と蒸発量の関係
表2に散水量と蒸発量の関係を示す。鉄板屋根では,散水量2kg/・hの方が10kg/・h,6kg/・hよりも蒸発量が多いという結果が得られた。またスレート屋根では,散水量10kg/・hが一番蒸発量が少ないという結果となった。
・屋根材料と蒸発量の関係
表3に屋根材料と蒸発量を示す。散水量40kg/・hでは,鉄板屋根の方がスレート屋根よりも蒸発量が多
いという結果となった。逆に,散水量6kg/・hでは,スレート屋根の方が鉄板屋根よりも蒸発量が多いという結果が得られた。散水量20,10,2kg/・hでは,蒸発量の差があまりみられなかった。
・気象と冷却効果の関係
表4に熱流入低減量と気象要因の関係性を示す。熱流入低減量と日射量,外気温度は相関が見られたが,熱流入低減量と外気湿度,風速では相関がみられなかった。

 

[単一風向型 風を取り込む様子]
 

(3)乾燥地域の採風と湿気冷却(シミュレーション)

1.研究目的
本研究では,砂漠気候における伝統的建築物に,昔から存在する様々な風や温熱環境の工夫を,コンピュータシミュレーションにより解明・検証することを目的とする。
2.研究対象地域および建物
対象とする地域は,ケッペンの気候区分で乾燥気候の中でも砂漠気候に属する(図-1)。この気候の特徴は,外気温度の日変動が大きく,風が強いことである。したがって,この地域に存在する伝統的住居には,気候に対応した工夫が随所に見られる。研究は,中でも「採風塔」と呼ばれる上空の風を取り込む塔を有する建物に注目し,以下の点について研究を進め,総合的に検証していく。
・採風塔:風の取り込み方法の検証(図-2〜3)。
・壁(熱容量の大きい構造材):外気温と室温の変動から,外気温の寒暖の差が室内で緩和されているか確認。
・水利用:室内の風の通り道に水を湛えた壺や池(噴水)などを設置する習慣と加湿冷却効果についての関係を検討(図-4)。
3.研究方法
伝統的建築物は,現存しないものが多いため,3次元熱流体解析システムを用い,建物をモデル化し屋外から風の流れと温熱環境を計算させる。日射および外気温度は気象データから値を用い,時間ごとに変化させ,2日(48時間)分の変化を計算させる。
4.結果
採風塔は,文献調査から卓越風により2種類に分類し,ともに外部風が室内に取り込まれる様子を確認できた(図-5〜6)。温度変化についても,外気温に比べ室温の振幅が小さいことを確認した(図-7)。

 

[モデル図]
[冷却効果と日射量の図]
 

 

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