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地域マネジメントプロジェクト 第1回研究会

日時:2004年9月29日 19:00〜20:30
場所: 法政大学 市ヶ谷校舎ボアソナードタワー25階 会議室C
テーマ:舟運を活かしたモーダルシフトのまちづくり

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『舟運を活かしたモーダルシフトのまちづくり』  伊瀬洋昭
(自転車と路面電車と船運のまちづくりフォーラム、酸性雨調査研究会)
自動車交通公害に悩む大都市東京では、交通需要マネジメント(TDM)の一環として、ロードプライシングや他の輸送手段に代替し自動車交通量の削減を図るモーダルシフトを進めている。その選択肢の一つとして「舟運」があげられている。江戸・東京の舟運利用の歴史をふりかえりながら、環境負荷の少ない輸送手段である河川舟運の現況の紹介と、その可能性と舟運を活かしたまちづくりの課題への考えを示した。
首都圏における河川舟運の歴史として、下総台地と武蔵野台地の間にある東京低地においては、各地の古墳の石室石材として房州石(千葉県鋸山の凝灰石)が使われていたことから、古墳時代後期にはすでに河川舟運が利用されていたと考えられる。江戸時代には、綾瀬川、荒川、新河岸川、中川等の河川舟運が利用され、各地から農産物、薪炭、木材、醤油などが江戸へ運ばれ、百万都市江戸の人々の生活を支えていた。復路の舟運は、日用品や海産物などとともに、灰や下肥を運搬し、消費廃棄物を有価物として産地へリサイクルする循環型社会を維持する役割を担っていた。その後、様々な変遷を遂げていくが、戦後自然と衰退していった。
河川舟運利用の現状において、物流利用の中心は石油輸送であり、清掃事業・旅客輸送においても活用されている。そして、阪神淡路大震災を契機に、物資輸送における舟運の役割が再認識され都市防災面から期待されている。
東京都では、2000年11月に「東京都建設リサイクルガイドライン」において、公共事業や民間事業における建設副産物の運搬にあたって、環境対策、コスト縮減の観点から鉄道・舟運による複合的な運搬方式へのモーダルシフトを推奨している。
しかし、舟運活用における問題として、荒川や隅田川において、橋梁桁下高が低いという物理的制約もあるが、河川構造と河川法の制約がある。河川の構造物と河川法との間では、固定物を河川区域内に建造してはならないという制約がある。また、河川の利用に関して、占有利用という制約もある。これらの制約があるために、従来から河川利用を前提に立地していた工場も、設備を大型化できないという点から数が減少している。この点に関して、国土交通省と実際に河川を管理する立場にある東京都において見解が一致していないのが現状である。
以上を踏まえ河川舟運利用のための今後の課題として、(1)舟運利用のための河川整備、(2)都市環境との調和、(3)都市大気を汚さない舟運の実用化、(4)舟運を支える地域産業の振興、(5)社会経済的誘導策の導入について提案を行った。

 

『市民のもとめるモーダルシフトのまちづくり』  権上かおる
(自転車と路面電車と船運のまちづくりフォーラム、酸性雨調査研究会)
温暖化により地球レベルでその対策がもとめられている昨今、自動車の技術改良のみならず、代替交通機関へのモーダルシフトの可能性が注目されている。今回の発表では、市民の立場から、モーダルシフトの必要性とその可能性について、その背景、考え方、立場の位置づけとその可能性を示唆した。今回は、隅田川沿いの新聞工場建設に対し輸送方法代替案の提案などに取り組みを事例として紹介した。そして、今後の方向について考えを示唆した。
北区堀船は、明治・大正・昭和の戦前、隅田川の舟運で発達をし、戦後舟運衰退により、閑静な住宅街として形成された地区である。隅田川に面したその地域に、読売新聞印刷工場の建設が予定された。それに伴い、住民の公害への不安から酸性雨調査研究会と協力し、2001年12月から本格的な調査がはじめられた。内容として主に問題となったのは、騒音であり、新聞の配送のピークが夜中の12時から1時、夜中にトラックの騒音が発生する。この問題を解決するため、まず、隅田川物流実験が行われた。新聞印刷用ロール紙の輸送方法について、11tトラック49台による陸送と河川用船舶(180t)による隅田川舟運とを比較するための実験である。速度、燃料、消費量、二酸化炭素排出量、コスト、人間生活への影響などが調べられた。その結果、舟運活用への効用を数量的に示した輸送方法代替案を、市民からの「もう一つの環境影響評価書」として東京都に提出している。
調査を進めていく経緯で、東京都の公害調停において、3,637名の公害調停申請者を集めるなどしている。その間、国と自治体との対応の差、関係者以外への認知を広げる困難を経ている。
首都圏における市民団体は、隅田川市民交流実行委員会の隅田川に白魚をもとめる団体のように、川の文化・水質・自然保護に関する市民団体が多い。その中で、市民活動としてのモーダルシフト(物流・舟運)の位置づけは、国内においては例がない。
「世界水フォーラム」において「川と交通」内陸水運の分科会の国内委員として参加することとなる。世界各国から様々なテーマをもった人々が集まる中で共通したのが、舟運に対するメリット(省エネルギー・防災・水辺環境・モーダルシフト)と阻害理由(費用・認識不足・港湾設備の不足・河道の未整備・船と陸路の接続)である。
最近では、韓国・ソウル市の清渓川で、高架道路を取り払い都市河川を復元する事業が、世界的にも注目を集めている。日本においては、海に囲われたセイロカタワーの工事、北千住西口の再開発において舟運が利用されるなど少しずつ舟運への動きがでてきている。

 

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