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再生プロジェクト第1回研究会

日時:2004年7月26日 18:00〜21:00
場所:法政大学市谷キャンパス80年館大会議室

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『港とウォーターフロント開発/再生について経緯と事例』 宮地豊
物流・産業・生活など様々な機能を有する港におけるウォーターフロント開発/再生について、その背景、再開発の考え方、関連する施策、などを国内外の事例を基に紹介するとともに、今後の方向について考えを示した。
港は、人・物・金・情報の交流拠点として様々な機能を有している。かつての港はそれらの機能が混在していたが、経済発展の過程で、港湾においても効率化の追求により、コンテナリゼーションの進展や、臨海部への大規模産業立地が進み、市民生活と港湾との機能的、空間的分離が生じた。
コンテナリゼーションの進展に伴い、ニューヨーク港、サンフランシスコ港などでは、市街地と隣接した地区に整備された「くし型埠頭(ピア)」では、深い水深、長い延長、広いヤードが必要なコンテナターミナルとしては対応できないため、それぞれ、オークランド、ニュージャージーに新たなコンテナ埠頭が建設された。日本においても神戸港、横浜港、大阪港などの内港地区(インナーハーバー)が物流機能的に陳腐化し機能転換の必要性が生じた。(図1 サンフランシスコ港、オークランド港、 図2 大阪港)
一方、「みなとまち」の中心地であったインナーハーバーは、水際を有し、市街地と近接しているという立地特性から新たな有効活用の可能性があると共に、市民生活や地域の活性化の要請からウォーターフロント再開発の取り組みが進められてきた。
また、臨海部に展開されてきた産業空間においても、産業構造転換の結果、大規模な空間の利用転換の要請が発生した。アムステルダムのEastern Docklands地区では再開発において、クルーズターミナル以外を居住空間として整備することとしたが、その際、水際へのこだわりから、開発に際しては、岸壁形状は変えず、埋め立ては行わず、逆に、運河が掘り込まれた。(図3 アムステルダムEastern Docklands地区)
日本の港湾行政の取り組みとしては、「総合的な港湾空間」の創造等を目標とする長期港湾整備政策「21世紀への港湾」が昭和60年5月に策定され、それを具体化するための様々な施策が展開された。(図4、5港湾行政の取り組み)
また、日本における今後のウォーターフロント開発/再生の方向性として、現在の主流である、商業・集客型の開発に加えて、(1)海外からの観光に対応したウォーターフロント開発/再生、(2)ウォーターフロントの特性を生かした居住空間、(3)景観面だけではなく、生態系も配慮したウォーターフロントの再生について提案を行った。

[図1 サンフランシスコ港、オークランド港]
[図2 大阪港]
[図3 アムステルダムEastern Docklands地区]
[図4 港湾行政の取り組み]
[図5 港湾行政の取り組み]

 

『世界の都市の水辺−自然共生型の都市再生における河川・水辺 の取組みについて(日本)− 吉川勝秀
これからの水辺をいかした都市再生を考えた時に、日本において都市計画は根本的に機能せず、都市計画の中で河川というものが外されてきてしまった。そこで、河川・水辺と都市の中の空間というものをいま見つめ直したときに、何をすべきなのかを、実例を挙げながら、今回の発表で示した。
まず、海外の都市における水辺を見ていと、ドイツのケルンでは、ライン川沿いにあった高速道路を地下化し、地上が公園に整備された。また、デュッセルドルフでも幹線道路を地下化し、ライン川沿いにかつての古いまち並みを再生させた。そして、ボストンの高速道路地下化や、ソウルの清渓川の高速道路撤去による水辺再生といった、川と湖畔の都市再生が行なわれ、都市の川と道路の関係を見直すことで、都市の中に水辺のある風景を取り戻すことの良さを、これらの事業が強く印象付けた。
これらを踏まえ、水辺に着目した都市再生を考えていくと、建築サイズ、ランドスケープのサイズ、そして、河川・流域といったサイズの三つの空間スケールに分けることができ、これらのサイズから都市再生に取り組む必要がある。しかし現状では、個々のサイズのみで議論がなされていることが多く、それぞれの空間スケールサイズが連携し、共同研究を進め、実践していくことが今後必要である。
ここで建築サイズの例として、渋谷川のケーススタディを見ていくと、渋谷川沿いのある公開空地では、渋谷川沿いに木が植えられ、川に背を向けた計画となっている。もっと川を取り込んだ公開空地にするなど、川をいかした土地利用があってもいいのではないかと思われる。
また、東京首都圏の明治40年から消失した川と増えた川を見ていくと、蓋かけ、埋め立てと下水道化により、川や運河が消失した部分が多く見られ、いかに水辺を破壊してきたかがわかる。日本における実践的な再生成果としては、隅田川、紫川などの再生が挙げられ、最近では、政府の都市再生本部の都市再生プロジェクトにより、神田川や渋谷川、道頓堀川、堀川(京都)などの河川、水辺の再生が議論されている。
そうした中で、水・川・水路と緑を軸に、水辺をいかした自然共生型都市をめざし、都市再生を考えていくには、次の構想を出すことが重要となる。そのために、先ほどの三つの空間スケールの観点による空間的土地利用シナリオを考える必要があり、さらに、水物質循環に着目したシナリオ、生態系に着目したシナリオなどといったように、自然共生型都市を実現する具体的なシナリオというものを、これから設計・提示していかなければならない。

[ケルン;ライン川]
[デュッセルドルフ;ライン川]
[川を遮断する河畔の公開空地]
[消失した河道・水路]
[新しく出来た河道・水路]
[自然共生型流域圏・都市再生イニシアチブ]
 

 

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